微小重力環境の「ライナスの毛布」 -Security Blanket-
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4-1-c 「ブランケット型」ツールのデザイン、制作、提案
ブランケット型は、バルーン型(ピロー型)のバリエーションとして派生したタイプである。厚手の四角い1枚の布状の形態であることから、ぐしゃぐしゃに丸めて「しがみつく」体勢で使用する、棒状に巻き上げて「かかえる」「だく」体勢で使用する、ひろげて毛布のように体に巻き付けて使用する等、様々な使用パターンの可能性を有する。折り畳めば比較的コンパクトになり、可搬性、収納性にも優れている。また、基本となる形状がシンプルであることから、付加機能を追加することも比較的平易であると予想され、このタイプをもとにした今後の展開の可能性は大きいと考える。

「Security」と結びつく感覚は本来個人的な感覚体験や慣習と深く関連している部分があり、その実態は個人により様々であると思われる。この点に着目し、今回の試作では使用者それぞれにとっての「Security」な感覚と結びつく触感、材質、色彩等をより的確に選択する方法として、2名の製作者自身を使用者と仮定し、各々の「個人的嗜好」を手がかりに表皮に用いる素材の触感、材質、色彩等を決定した計2点の試作品を製作した。
ただし、サイズを2m四方前後の正方形とすること、微小重力環境での方位性に対する色彩による参照軸としての要素を含める意図から、一部に異なる色彩のパッチ部分を作ることは両者共通の事項とした。パッチ部分の形状については2名それぞれでデザインし決定した。心材については、当初2点とも低反発ウレタンを使用する予定であったが、入手の問題により1点は緩衝用シートを使用した。
こうしたプロセスを経て試作された2点を比較すると、同じく「Security」をキーワードにしたにも関わらず、予想以上に表情の違うものが生まれ興味深い結果となったといえる。

A-1 ブランケット型 ver. Inoue
素材:
    ニット布
    低反発ウレタン
サイズ:
    W2000mm x D2000mm x H12mm
A-2 ブランケット型 ver. Inoue マケット2点
A-2-1  ピンク(ひも付き)  W220mm x D980mm x H12mm
A-2-2  グレーのフリース布(ポケット付き)  W520mm x D330mm x H25mm

ブランケット型はすでに述べたように巻いたり畳んだりすることで多様な形態を生み出すことが可能である。
1のマケットでは、A バルーン型 (Yellow Arm)と同じく、紐状の「触手」を取り付けることで、船体壁に結びつけたり、本体にまきつけて容易に筒状の形態を保持したり、不規則な立体状にしたりするなど、形態の使用可能性を拡げる提案である。じゃまであれば、本体内部に収納すればよい。
2のマケットは、ブランケット型あるいはピロー型に小さな道具や小物を収納するポケットを取り付ける提案である。こちらはフリース布を用いたが、材質や表面の装飾パターンも検討の余地がある。
これらのアイデアは自由に組みあわせることができる。
A-2-1 ひも付きブランケット (マケット) A-2-2 ポケット付きブランケット (マケット)
SBmaquetteP1.jpg SBmaquetteG1.jpg
SBmaquetteP2.jpg SBmaquetteG2.jpg
ひもでかたちをキープしたり、船内の把手に結びつけたりする。
ブランケット本体の大きさ、かたちに特に制約はない。
ポケット付きのブランケット。大きさ、かたちに特に制約はない。
B-1 ブランケット型 ver. Nakahara
素材:
    タオル布 (グレー、生成り)
    緩衝用シート
サイズ:
    W2200mm x D2200mm x H15mm
表面素材のタオル布の色や肌触り等は、個人的感性によりほとんど直感的に選択したものである。これ以外の種類の布地も色や肌触りを含めいくつか入手したが時間的制約から試作の完成にはいたらなかった。心材には当初低反発ウレタンを選択していたが、これも入手の問題から緩衝用シートを数層重ねたものでの代用となった。異なる色彩のパッチ部分はグレー色のタオル布を使用して一つのコーナー部分に作った。それ以外の部分には生成り色のタオル布を使用した。また、心材がずれるのを防ぐために何か所かにナカウチをした。
完成したツールの使用感としては、予想していたよりもやや固めの弾力となり、また重量も予想以上に重いものとなった。こうした条件が微小重力環境の船内での使用にどのように作用するかは実際の使用を待つよりないが、微小重力体験飛行での実験の際に軽量のスチレンフォーム製のヒモがその軽量さ故にあまり興味ある対象とならなかったことから推測すると、ある程度の質量を持つことが効果的であると予想することも出来るのではないだろうか。
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