<< 報告書目次 宇宙への芸術的アプローチ『1997年度研究報告書』-2

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2.STS-87芸術ミッションの提案と実施内容の検討

2.1 概要

今年度のわれわれの研究は、STS-87における「芸術ミッション」の構想と提案を軸に展開された。

STS-87芸術ミッションのための作業は、1997年9月11日、NASDA担当者より、同年11月に打ち上げが実施されるNASAのスペースシャトル「コロンビア号」にて行う芸術ミッションのシナリオ作成の依頼を受けることからスタートした。この依頼は、高等研からの本年度研究実施の依頼と同時になされ、いささか唐突に思われたが、土井飛行士自身が宇宙で絵を描いてみたいという意向を示したことを直接のきっかけにして、本委託研究に対するNASDAの関心を背景にしてなされたものである。われわれにとっては、時間的にも情報量の面でもきわめて不十分な条件下であったが、本研究を具体性をもった新しいステージへ飛躍させるものとして、この課題に積極的に取り組むことにした。

残念ながら、実現できたのは提案内容のほんの一部にすぎず、また不十分な内容ではあったが、初めての芸術領域における実験として、そのプロセス・結果ともに、今後につながるさまざまな発見と認識をもたらすものとなった。

本作業は、次の3つの段階からなる。

(1)STS-87芸術ミッションのシナリオ作成(持込み材料、プログラム内容の検討を含む)
(2)放送用の船内ステータスレポートの芸術関連項目のためのシナリオ作成
(3)実験結果および土井飛行士との会見とその検討

*このうち、(1)(2)の提案は、採用不採用にかかわらず、その全体があくまでわれわれの共同研究から生まれた成果であるので、そのままここに収録する。

2.2 実施スケジュール

97/9/11 高等研およびNASDA側担当者との打ち合わせ
9/18 船内持込み材料および活動内容の概略提案
9/22 NASAから、持込み材料の制限と基礎的な絵画実験を中心に行う方針が提示される
9/26 STS-87芸術ミッションの提案をNASDAへ送付
9/30 NASDAより、船内ステータスレポートのシナリオ作成の依頼
10/20 船内ステータスレポートのシナリオをNASDAへ送付
10/24 NASDAより、提案内容の一つ「微小重力下における宇宙絵画の基礎実験」の部分的実施決定の連絡。調整のため目的・内容について説明。
11/14 NASDAより、芸術ミッションの内容の最終決定の連絡
11/20 コロンビア号打上げ(日本時間4:26AM)
11/25 NASDAより、船内ステータスレポートの最終案決定の連絡
11/25 土井飛行士によるEVA実施
12/3 土井飛行士による第2回目EVAの実施
12/5 コロンビア号帰還
98/1/12 土井飛行士のスケッチ2点のカラーコピー入手、検討を始める
1/23 土井飛行士への質問状作成、高等研に送付
1/28 NASDAにて土井飛行士と会見
2/16 高等研にて、NASA 宇宙飛行士講演会
2/17 高等研にて、NASA 宇宙飛行士との合同研究会
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2.3 機材と材料および前提条件

まず、本芸術ミッションの立案に際し、NASA側より船内持込み機材・材料の提示を早急に求められ、9月18日に、われわれは次の持込み材料と活動の提案を行った。これらはいずれも、今後の継続的な芸術ミッションの展開と将来のJEMでの芸術プロジェクトの実施を射程に入れた、予備研究として提案したものである。

(1)デジタルビデオカメラ:小型・軽量のカメラを用いて、あるシナリオにより船内で芸術的活動を行い、今後の芸術計画の展開に有効な映像や音、発想源を得る。
(2)粘土:もっとも原始的で単純な手段と行為により、微小重力空間での造形表現の可能性を探り、人間心理やコミュニケーションに及ぼす効果を検討する。実験結果は地上に持ち帰り、新たな検討材料にしたり、作品化の可能性を検討する。
(3)画材:和紙、水彩絵具、墨汁、筆、スポイトにより、微小重力空間での絵画表現の基本的な可能性と条件をさぐり、心理面やコミュニケーション面への効果を検討する。
(4)船外活動中の芸術的パフォーマンス:日本人初の船外活動(EVA)実施に際し、人類初の宇宙空間での芸術的行為として、簡単な道具等により、短時間の芸術的パフォーマンスを行う。道具等は用いず、素手で行うことも考える。

これに対し、NASAおよびNASDAより次の前提条件が提示され、構想は大きな制約を受けることになった。

(1)安全性および衛生上の観点から、使用器材は、色鉛筆、クレヨン、FDF用紙とNASA指定のボールペン及びフェルトペンの範囲内とする(のちに色鉛筆、クレヨン、FDF用紙2枚がNASAよりサンプルとして届けられた)。
(2)今回の芸術ミッションは、あくまで非公式に勤務時間外(off duty time)に行うものであり、割り当て可能な時間は、一日5分程度、14日間とする。

加えて、この提案は9月26日までにまとめることが求められた。つまり、検討のための時間はほぼ1週間しかないという、大きな時間的制約をどう乗り越えるかも、われわれの課題となったのである。

 

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