onmuseum_logo_b.gif s.gif ■法的問題について
(藤浩志さんが回答文につけて送ってくれたコメントの全文です。)
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s.gif*無断で引用・転載することを固く禁じます。
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■シンポジウム概要

■井上明彦のレジュメ

■アンケート依頼文

■アンケートへの回答
(50音順、敬称略)

石原友明

今村 源

扇 千花

大山幸子

児玉靖枝

椎原 保

夏池 篤

ひろいのぶこ

藤 浩志

三嶽伊紗

森下明彦

山部泰司

渡辺信明


■法的問題について
(藤浩志氏から)

■補遺二点

■芦屋市立美術博物館を考えるワーキンググループ

■井上への問い合わせ



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藤 浩志さんのコメント

ざ、ざーっと意見を書いてみます。
美術館の問題についてですが、僕の立場からいうと、美術館のシステムそのものが変わらなきゃいけない時期に来ていると捉えています。というか行政のこれまで行ってきた土木/建築発注形式中心の施設作りのシステムが変化しなければいけない時期なのかと。この話はややこしくてここで論じられる種類のものではなく、これからの課題としていろいろな経験を重ねてゆかなければならないとは思いますが、簡単に問題点をいくつかの角度から。

1、法律における行政の任務、責任について
美術館が設置されているのは博物館法に基づいているわけですが、これをさらに遡ると博物館法→社会教育法→教育基本法→日本国憲法となります。
僕の解釈では「博物館の設置」は社会教育法において国及び地方公共団体の任務であるわけで、その設置を放棄することは法律上できないのではないかな?と思っているのですが、違うかな。
何がいいたいかというと、設置という言葉の捉え方が問題になりますが、設け置くことが地方自治体の責任であるわけですから、必ずしも建物を運営することではないということです。
僕が話すまでもなく、博物館のミッションはざっくりとは作品の保存、収集と研究がひとつの柱、それと教育普及が2つめの柱。自治体としてはそれを行う任務を果たさなければならないわけで、それを行う法律の定めるところの機関、組織がそれを設置しなければならないんですよね。(僕は法律家ではないから詳しくはないが・・)
おそらく芦屋市の勘違いはその責務の放棄なのかな? これは実情をしらないのであまり僕は論じれない。しかし、もしそうだとすると、十分に憲法違反、法律違反として告訴できる内容のものだったりしますよね。地方自治体はその任務を放棄できないはず。
博物館がシステムとしてその地方自治体に設置されることが重要なのであって、それによっていかなる住民も平等に社会教育を受ける権利があるわけです。文化うんぬんの話はおいといて、法律的にはそうだと思う。
行政OS説を唱える僕の立場から言えば、器もいらなければ運営も民間でよい。でも基本システム(OS)を設置しなければならないのは行政の義務なのでは?

2、記録と保存、教育普及の手法の問題
具体以降というか前衛以降、モノとしての作品というよりはコトとしての作品の収集を行う場合、そのレコード、記録性の問題があると思っています。そのふさわしい「施設の設置」の手法の問題です。それについてもっと現場の人間は責任を持って考えなきゃならなくなった。具体の作品がモノとしてどのような意味を持っているかということと、具体の作品を事柄としてどのように収集保存してゆかねばならないかということ。これは学芸員の問題というわけではなく(かなりかばいますが)、収集のシステムや予算執行のシステムにも大きな変革が求められているということでもあると思います。
実際に具体が海外で評価されていたとしても、住民にとってみれば単なるゴミのような、あるいは子どもの遊びのようなモノを集めれれて見せられても、それを誇りに思えるかどうか。
具体的に具体はまだいいが、極端な話、僕の表現の場合かえっこのおもちゃやペットボトルを保存収集されても何の意味も読み取れない。しかし、そうではない方法で僕の活動の保存収集を行おうとするシステムは今まったく見えない現状もあります。
このあたりの問題もこれからの課題として見えています。

3、公共施設の位置づけの認識の問題
収集された作品を公共施設が保存しているモノという捉え方ではなく地域の共有財産として捉える考え方。公共という言葉が良くない。共有物だと思えばどう?
個人では買えないが、みんなで購入したもの。それを研究、保管、公開しつつ次の世代を育てる遺伝子をつくる場としての「共有の場」「共有施設」「共有財産」という視点がこれからもっと浸透してくる必要があるということで、今までこの視点が市民感情の中に芽生えなかった時代だったかと。ある種の共同体の共有財産(=地域の誇り)として表現活動の事柄をレコードできるかどうかの手法の問題や「自分のものとして楽しむ」住民の意識の変革を促すシステムづくりが求められます。

4、美術館を博物館法の中の位置づけで捉えるのではなく、地域活動の様々な拠点のひとつとして捉える新しい場という視点
場という捉え方。皆の共有空間、行き場、活動の場、癒しの場、刺激の場、探求の場、ヒントをもらう場、遊び場、楽しみ場、冒険の場、学習の場、表現の場、発見の場
それを持っているという安心感とプライド。それを失うということはどういうことなのか? 本当はもっと使える可能性を生み出せる場なのだろうけど知らない人が多すぎる。利用者が少なすぎる。という問題もこれからの問題なのでは? これは運営手法とシステム構成の問題。
とまあ、美術館が博物館を離れ、地域活動の拠点として再構成されるともっと面白くなると思っています。そのうえで、しっかりした表現者と研究者と繋ぎ手と参加者、主体的な利用者を作ってゆく。その基本システムをつくるのは地方自治体の責務であり、決してこれを放棄できないというのがざっくりした僕の意見。そしてそのシステムは常に更新されなければならないということ。


以下にどうでもいいような関連法律を添付します。赤字が今回に関係すると思われる項目。
教育基本法の上位概念として日本国憲法が位置づけられています。
日本国憲法⇒教育基本法⇒社会教育法⇒博物館法
となるのかな? 専門的な裏づけはありませんが。
おそらく法律的に問題となる概念は、設置の概念と、施設という概念の解釈の方法。なのかな?


教育基本法
 われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
 われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造を目指す教育を普及徹底しなければならない。
 ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。

第一条(教育の目的)
 教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に満ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない。
第二条(教育の方針)
 教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。
第三条(教育の機会均等)
1 すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであつて、人種、信条、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によつて修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。

(途中省略します。)
第七条(社会教育)
1 家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によつて奨励されなければならない。
2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館等の施設の設置、学校の施設の利用その他適当な方法によつて教育の目的の実現に努めなければならない。


社会教育法
第1章 総 則
(この法律の目的)
第1条 この法律は、教育基本法(昭和22年法律第25号)の精神に則り、社会教育に関する国及び地方公共団体の任務を明らかにすることを目的とする。
(社会教育の定義)
第2条 この法律で「社会教育」とは、学校教育法(昭和22年法律第26号)に基き、学校の教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動(体育及びレクリエーションの活動を含む。)をいう。
(国及び地方公共団体の任務)
第3条 国及び地方公共団体は、この法律及び他の法令の定めるところにより、社会教育の奨励に必要な施設の設置及び運営、集会の開催、資料の作製、頒布その他の方法により、すべての国民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、自ら実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を醸成するように努めなければならない。
2 国及び地方公共団体は、前項の任務を行うに当たつては、社会教育が学校教育及び家庭教育との密接な関連性を有することにかんがみ、学校教育との連携の確保に努めるとともに、家庭教育の向上に資することとなるよう必要な配慮をするものとする。


博物館法
第1章 総 則
(この法律の目的)
第1条 この法律は、社会教育法(昭和24年法律第207号)の精神に基き、博物館の設定及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育、学術及び文化の発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関(社会教育法による公民館及び図書館法(昭和25年法律第118号)による図書館を除く。)のうち、地方公共団体、民法(明治29年法律第89号)第34条の法人、宗教法人又は政令で定めるその他の法人(独立行政法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人をいう。第29条において同じ)を除く。)が設置するもので第2章の規定による登録を受けたものをいう。

(以下省略)


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