onmuseum_logo_b.gif s.gif ■井上明彦のレジュメ
(各パネラーに求められた報告のレジュメの井上分です。シンポ当日、会場で配布され、総合討議のきっかけになりました。)
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■シンポジウム概要

■井上明彦のレジュメ

■アンケート依頼文

■アンケートへの回答
(50音順、敬称略)

石原友明

今村 源

扇 千花

大山幸子

児玉靖枝

椎原 保

夏池 篤

ひろいのぶこ

藤 浩志

三嶽伊紗

森下明彦

山部泰司

渡辺信明


■法的問題について
(藤浩志氏から)

■補遺二点

■芦屋市立美術博物館を考えるワーキンググループ

■井上への問い合わせ



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ビジュツ・ハクブツ・カンについての二、三の質問

井上明彦

なにぶん不勉強で申しわけございません。美術史学会員でも学芸員でもない私にはわからないことだらけです。質問も混乱していると思いますが、どうかお教え下されば幸いです。

(1)美術−美術史−美術館の関係について:
ある西洋の学者が「美学や美術史、美術館をつくりだすことによって、あるモノを芸術作品とし、文化遺産というものを基礎づけたのは、われわれ西洋人だ」と言いました。また別の学者は、「西洋人にとっての芸術の空間とは何よりも美術館だ。すなわち西洋文化においては芸術作品とは現実ないし潜在的に美術館の中にその場所をもつもののことである」と言いました。これらは正しいですか? 西洋以外、例えばこの国では美術の空間はどこにあるのですか? 美術は美術史に登録されるために存在し、美術館はその登録所なのですか? 創造的なものつくりの技術はいっぱいありますが、なぜ美術だけ特別なのですか?

(2)美術史と他分野の関係について:
美術史学会は会員の三分の一が学芸員だそうですが、学芸員の中には美術史学会員ではない人、例えば美術家だったりデザイナーだったり教育者だったりする人もいますね。美術史の空間としての美術館ではそういう人は肩身がせまいのですか? また、美術史の人と考古学や歴史学の人は一般に折り合いが悪いと聞きます。双方とも人間の「つくる」という営みにかかわるのに、美術史の人は美術史的価値をもつもの以外に興味がなく、考古・歴史の人は美術が嫌いなのですか? ちなみに芦屋市立美術博物館は、「具体」の作品収集のことばかり言われますが、ユニークな美術教育活動や、美術部門と博物部門の連携は評価されていないのですか?

(3)なぜ根づかないのか:
創造的な芸術や文化が社会的な価値をもつかどうかを判断し、それをバックアップするのは、それに携わる現場の人間ではなく(彼らは自分の仕事で精いっぱいです)、社会を動かす政界やお役所のエライ人だと思います。社会教育法にも文化的環境の醸成は国や地方公共団体の「任務」だと書かれているそうですが、なぜこの国のエライ人たちは創造的な芸術や文化が嫌いなのですか? 社会の役に立たないからですか? 小さいころから身近に接していないからですか?



井上明彦(いのうえ あきひこ)1955年生まれ。京都大学大学院博士課程中退。京都市立芸術大学美術学部助教授。専門:造形計画。最近の主な作品/プロジェクトに《大佐町・光の記憶》(2000)、《新開地アートブックプロジェクト》(2003)など。主な著書に『モダニズムの越境3―表象からの越境』(共著、2002)など。


■ 以下はシンポジウムでの井上の口頭発表の冒頭部分です。


井上です。
私はこの10年ほどどちらかというと「美術館芸術」的なものに距離を置いた美術活動をしてきました。「美術館芸術」とは美術館を自分の理想の落ち着き先としている美術のことです。それではっきりいって今回のテーマになかなか入り込めません。無理に入り込もうとすると、無知も手伝ってレジュメに記したような混乱した疑問のうずに巻き込まれます。
すでに教えていただきたい疑問はレジュメに記してあります。ここでは、美術館・博物館の必要性に関するアンケートを交流のある友人の美術作家に送りましたので、それを紹介することで報告に変えたいと思います。
彼らは比較的長い美術活動を通して、日本の美術状況をさまざまに体験し、いろいろな見解を持っています。それらをここで紹介することで、このシンポジウムにつくり手の現場の声を反映させることがその目的です。多様な意見から浮かび上がってくるものを皆様なりに捉えていただけたら幸いです。
質問は、シンポジウムの主旨=「美術館・博物館の運営に学芸員を含む専門職員が不可欠であることを訴えるとともに、日本社会にとって美術館・博物館がなぜ必要なのかという問題を議論する」ということからそのまま引きだしました。以下の3点です。
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[1]美術館には専門の学芸員が必要だと思われますか? 必要ならそれはなぜですか? 
[2]日本の社会に美術館は必要ですか? 必要だとすればそれはなぜですか? 
[3]この国の美術にとって望ましいと考える美術館ないし文化施設とはどのようなものですか?
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名探偵コナンのようにそのつど声も変えたいところですが、そういうワザはありませんので、以下そのまま読ませていただきます。


このあと、各作家の回答文を質問ごとにひたすら読み上げましたが、時間の制約からすべてを紹介できませんでした。

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